「リアリティバイツ」とは、「厳しい現実」ということを意味します。
ジェネレーションX(アメリカ合衆国などにおいて1965年から1979年に生まれた世代を指す)といわれる若者四人を描いているということでがっつり四人それぞれにスポットライトがあたるのかと思いきや、実際は、ほぼウィノナとイーサンの恋愛模様。まあ、私もそのふたり目当てで観たわけですが…。
ベン・スティラーの初監督作品で、彼自身も出演しているという点も興味をひかれたポイント。
1994年の公開時にベン・スティラーのことは全く知らず、2013年の『LIFE!』で初めて認識しました…。
この『リアリティ・バイツ』は、50代になるまで未見で、いまさら…?という感じもありましたが
「この俳優さん、この映画に出てたんだ~。若~。」と面白がりながら鑑賞するのも、昔の映画を見直す楽しみのひとつかもしれません。
映画『リアリティ・バイツ』の作品情報・あらすじを簡単に。
作品情報
- リアリティ・バイツ(Reality Bites)
- 1994年(アメリカ)
- 監督:ベン・スティラー
- リレイナ・ピアース(ウィノナ・ライダー):TV局で働きながら、友人たちとの生活をビデオ撮影している
- トロイ・ダイアー(イーサン・ホーク):リレイナの男友達。頭は良いがひねくれ者
- ヴィッキー・マイナー(ジャニーン・ガラファロー):リレイナの女友達。GAPで勤務している。
- サミー・グレイ (スティーヴ・ザーン):トロイの男友達。両親に打ち明けられない秘密を抱えている。
- マイケル・グレイツ (ベン・スティラー):MTVの編集局長。
あらすじ
リレイナは大学を総代で卒業したものの、その後は親友のヴィッキーとアパートで共同生活をしながらTV局の契約社員として働いている。ドキュメンタリーを作ることを夢見て、仲間たちとの生活をビデオカメラにおさめる日々。ある日、仕事をクビになった男友達トロイとサミーがリレイナたちのアパートに転がりこんできて、四人での生活が始まる。リレイナもまた、ADとして担当するトークショーのホストを怒らせてしまいクビになるが、どこにも雇ってもらえず現実の厳しさを知る。リレイナは、車の事故をきっかけにマイケルと知り合い、ふたりの仲は進展していくが…。
映画『リアリティ・バイツ』の感想など(ネタバレあり)
ショートカットのウィノナ、最強です。
まず、何をおいても、ウィノナライダーの可愛らしさが際立っています。やはり、ショートカットの彼女が一番
好きです。イーサン・ホークは、やっぱり歯並びがちょっと気になりますが繊細な美しさにみとれます。彼が演じるトロイは、知的で、皮肉屋で、器用に立ち回れなくて、バンドのボーカルで!ぴったりですね~笑
何人もの女の子と付き合っている風なトロイ、最初のシーンで一緒にいた女の子がレネー・ゼルウィガーだったと後でわかってびっくりしました。「ブリジット・ジョーンズの日記」が大ヒットするのは今作の10年後!
ヴィッキーが働くGAPが日本に初上陸したのは1995年で、当時映画館で観た人たちのほとんどはピンときてなかったんでしょうね。(あちこち気になって、思考が寄り道してしまいます。)
リレイナは、自分の両親(離婚してそれぞれ新しいパートナーあり)との食事会にトロイを同席させたりしているから、ふたりは恋人?と思いましたがそんなに単純ではないんですね。
トロイは相手を簡単に変えるような関係を常としているし、リレイナは新しく出会ったマイケルと意気投合して付き合い始めます。
一番身近にいる恋愛対象になりそうでならない男性がトロイなら、リレイナがマイケルにちょっとひかれたのも何となくわかります。ちゃんと就職していて、ちゃんとスーツを着ていて、仕事に情熱もあって。分かりやすい常識を持っていて、自分もちゃんとした世界に行けそうな気さえしてしまうから。リレイナは「23歳でなにものかになれると思っていた」と発言するくらいだから上昇志向もあるし焦っているんですよね。だからトロイに対する思いは封印するし、マイケルが真実以上に大人に見えてしまっている、いや、そう見ようとしているのか。
トロイの嫉妬が、かなり素直じゃない件
マイケルと盛り上がり(この場面でかかる「Baby, I Love Your Way」ベタで、恥ずかしいくらいけどとってもよい)、遅くに帰宅したリレイナに嫉妬丸出しのトロイ。そんなに好きなのにずっと伝えられなかったのは、自信がないからでしょうか。真面目に働くのがばからしい、自由に生きたいというのが本心であっても、その生き方ではリレイナを幸せにできそうにないし。自分とは正反対の、結婚向きに見えるマイケルにやたらかみつき、インテリっぽい皮肉など投げつけたりしますが、やればやるほど観ている方はなんだか恥ずかしい。やたら恥ずかしい気がするのは、私がはるか昔に23歳を通り過ぎてしまったからでしょうか。
リレイナの頬を優しく包み込み、愛のことばをささやくトロイ。あれ?やっと心を決めて告白?と思いきや、次の展開でクッション投げたくなりました。あぁ、トロイって子供。23歳ってこんなだっけ?それに対してリレイナもキツイ言葉で応戦。納得です。
TV曲をクビになったリレイナは、GAPの店長となったヴィッキーに「バイトとして雇う」と言われ、失礼丸出しのことばで断って険悪に。売り言葉に買い言葉な部分もあったけれど、リレイナひどいよー。「親しき中にも礼儀あり」って、英語でも同じニュアンスの言い回しがあるのかな?
落ち込むリレイナに、自分の仕事クビ遍歴を語るトロイと、笑い転げるリレイナ。あれ?そんな簡単に仲直りできたのかな。この場面のふたりは本当にお似合いで、当初「もう、はっきりしないトロイじゃなくてマイケルじゃない?」とつい思ってしまった自分を軌道修正しました。そしてトロイはとうとう気持ちを口にするけれどリレイナの答えは「NO.」
そして、彼はアパートに帰ってこなくなります。
自分をわかってくれている人は誰なのか
完全に自暴自棄になり、電話の悩み相談にハマって電話料金が高額を叩き出したことをキッカケに、なんとか仕事を得たリレイアですが、久々に顔を出したトロイが女性連れだったことから彼に散々罵詈雑言を浴びせます。
この時のリレイアの顔、本当にこわいです…。人が内面のドロドロを吐き出すときってああなるのでしょうか。映画で女性が誰かをののしる場面なんて珍しくもないのに、すごくインパクト強かったです。
リレイアが撮りためた映像作品が、マイケルの社内で披露されることになりますが、都合よく切り刻まれ再編成された作品を観て、ショックを受けるリレイア。完成を確認しなかったというマイケルの無責任さにがっかりです。必死に謝罪するけれど、もしかしたら何に彼女が怒っているのか、実際のところマイケルには理解できていないのかもしれません。それが分からない人には彼女を幸せにすることはできないのに。
この日のために気合を入れて買ったドレスも全然似合っていなくて、マイケルに寄せたリレイアは魅力的じゃない…。
その出来事をきっかけに、トロイとリレイナはようやく結ばれますが、翌日行先も告げずに家を出たトロイにリレイアは不安を募らせます。どうして行先ぐらいさっさと言わないのこの人は?最後に、トロイがいろいろ言い訳するシーンがありますが…。
「なんなの?トロイ」という思いが頭を占めていて、この後マイケルが再び誠意を見せるために現れるなんて予想していませんでした。すでにマイケルの存在を忘れていたので、私。
何となくトロイを許してしまうのはどうなのか
バンド演奏で、彼女への思いをぶつけるもその場を去るリレイア。
またもや!姿を消した彼の行く先をサミーから聞き出し、追いかけようと家のドアを開けるとそこにはトロイが。
やっとふたりの呼吸がそろった瞬間です。この時、トロイが発した第一声の「Hi.」が今までのごたごたをすべて忘れさせるくらいに優しくて。
そしてハッピーエンドを迎えるのですが、うっすら「これはハッピーなのだろうか?」と思ってしまった自分がいました。トロイは今仕事はしてたっけ?バンドはこの先売れる見込みがあるの?自分の気持ちは素直に伝えたけれども、彼の本質は変わっていないんですけれども…。「俺、仕事決めてきたよ。」とか一切なく、この先同じことの繰り返しにならないかが心配です。観ている私も、イーサン・ホークの顔をしているトロイだから、なんとなく雰囲気で許してしまったような…?
『リアリティ・バイツ』まとめ
当初は予定になかった「マイケル」を登場人物に加えたため、ヴィッキーとサミーの出演場面が減ったそうですが、
ヴィッキーはともかく、サミーは出番少なすぎじゃないでしょうか。このふたりには重めのテーマが与えられているので、それも掘り下げていたら上映時間で描き切れないだろうとは思いますが。
それでも、恋愛映画としては面白く観ることができました。劇中の音楽もいいのでサントラを聴きたくなりました。
「あの頃」を通り過ぎた方にも興味が出たらぜひ観てほしい作品です。
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