この記事では、映画『飾窓の女』について書いていきます。
初見の時、ラストのオチで「えーーーーー!!」と声が出てしまったこの作品。
「昔の白黒映画?なんだかややこしそう…つまらなさそう…」なんて思わずに、ぜひ一度試してみてほしいです。
ストーリーは分かりやすいし、観始めたら引き込まれると思いますよ。
フィルム・ノワールとは1940年代から1950年代後半にハリウッドで作られた映画のジャンルのひとつです。
映画館で特集を組んで上映されることもありますし、根強い人気があることがうかがえます。
多くはファム・ファタールといわれる、魅力的で危険な雰囲気を持つ謎めいた女性が登場します。
この『飾窓の女』では、ジョーン・ベネット演じるアリス・リードという女性に惹かれた主人公が
事件に巻き込まれていきます。二人の出会い、その後の成り行きに「あーあ、男って…」と
あきれながら楽しんでください!
映画『飾窓の女』の作品情報・あらすじを簡単に。
作品情報
- 飾窓の女(The Woman in the Window)
- 1944年(アメリカ)
- 監督:フリッツ・ラング
- リチャード・ウォンリー(エドワード・G・ロビンソン):大学の犯罪学の助教授
- アリス・リード(ジョーン・ベネット):肖像画のモデルの女性
- フランク・レイラー検事 (レイモンド・マッセイ):リチャードの友人
- マイケル・バークステイン医師 (エドモンド・ブレオン):リチャードの友人
- ハイト (ダン・デュリエ):マザードの用心棒
- クロード・マザード/フランク・ハワード(アーサー・ロフト):アリスに思いを寄せる男
あらすじ
リチャード・ウォンリーは大学で犯罪学を教える助教授。
妻と二人の子供を休暇の旅行に送り出し、立ち寄ったクラブで友人のフランク・レイラー、マイケル・バークステインと一緒になり、解放感もあってかいつもより多く酒を飲む。
ショーを観に行くという友人たちの誘いを断り、彼はひとりで本を読みながらクラブに遅くまで残った。
クラブを出たリチャードは、隣の店の飾り窓に置かれた美しい女性の肖像画にみとれ、しばし足を止める。
そこへ、絵のモデルであるというアリス・リードという女性が突然現れて、これから一緒に飲みに行こうと誘われる。
酒を楽しんだ後、二人はアリスのアパートへ向かうが、彼女に恋心を抱くフランクが予期せず現れて、激高した彼はリチャードにつかみかかる。不利な体勢となったリチャードは手を伸ばし…。
映画『飾窓の女』の感想など(ネタバレあり)
妻子を旅行に送り出したあと
休暇で旅行に出かける妻と二人の子供たちを見送って、クラブで友人とともにお酒を楽しむ主人公。
よくあることですよね。主人公のリチャードも、ちょっと気が緩んでいつもより飲みすぎてしまいます。
でも「もっとハメを外さなきゃ!堅物なんだから」と友人に言われるくらいなので、リチャードは普段から節度を守って暮らしている真面目な男なのでしょう。つかの間の独り身を楽しもうとせず、帰宅しようとします。それゆえ、このあとの展開が大変気の毒です…。
「10時半に声をかけてほしい」とボーイに頼んで本を読みふけるリチャード。時間が来て外に出ますが、店の飾窓に陳列された美女の肖像画に心を奪われて立ち止まります。
すると、肖像画のモデルだという美しい女性が現れ、一緒に飲まないかと声をかけてきます。危ない、危ない。
そこで終わればいいものの、他にも良いスケッチがあるから自宅に見に来ないかと誘われて、「つまらない冒険心を起こすのもどうかと思う」とかなんだかごちゃごちゃ言いつつも、結局は行ってしまうリチャード…。
やはり美女には抗えないのか、いや、美女過ぎて逆に怖いですけどね。
つまらない冒険心を起こして慣れないことをした結果
彼女の家に到着したのは午前12時10分。
豪華な調度品や装飾品で整えられた広くきれいな部屋は嫌な予感がしますね~。
アリス役のジョーン・ベネット、私はおそらくこの作品でしか観たことがないのですが、部屋に入ってあちこち動き回ると外でのシーンよりも美しさがひきたっています。特に後ろ姿の全身ショットはものすごく華奢なのに色気が香り立つ感じで、足がきれい!
そこへ突然現れる大柄のいかにも危険そうな男。リチャードの存在に激高してもみ合いになり、体勢不利となったリチャードが伸ばした手に、アリスはハサミを渡してしまいます。やるか、やられるかの状況で、リチャードは自分を守るために手を下してしまいます。そして、アリスと男の関係を知るものは誰もいないということばを信じ、犯罪を隠蔽しようと計画を立てます。
その時のリチャードの様子が妙に落ちいており、てきぱきとアリスに支持を出したりして予想外に頼れる感を醸し出しているんですよね。人のよい、気弱な性格かと思っていましたが、犯罪学を教えている教授としての底力が出たのでしょう。
捜査の進展と今後の展開にどきどき
そして隠蔽工作を実行するリチャード。この一連の作業がわりとずさんで、証拠を残しまくり。
室内であれこれ計画を立てるのと、実行するのとの間にはやはり大きな壁がありますね。外は大雨でしたし、
大男を運ぶのは重労働です。
リチャードが殺めてしまった男は、財界の大物クロード・マザードと判明します。友人のフランクは検事だったため内情に詳しく、捜査に関する情報はリチャードにつつぬけ。犯人が残した証拠について語るフランクを見るリチャード、「なんちゅう顔してるねん!!」と思わずツッコミを入れたくなる表情をしています。変な汗も出まくりでしょうが、それでも捜査情報が聴けるのはラッキーです。
アリスとマザードの関係は誰も知らないはずだったのに、マザードの用心棒だという男ハイトが新たに登場。
アリスを恐喝し、金を奪おうと家にやってきますが、美しい彼女も同時に手に入れたくなったハイトは一緒に逃げようと誘います。アリスは誘いに乗ったふりをして薬入りの酒を飲ませようとしますが、ばれて隠しておいた金やマザードのペンダントを奪われます。
ものすごい悪女だったら、ここでリチャードを裏切ってハイトと共に姿を消しそうですが、その点アリスはまともな女性のようです。
金を奪われたアリスはリチャードに電話で助けを求めますが、策も気力も尽き果てた彼は洗面所へ。コップの水へ
薬を次々に入れていきます。この薬は、事件後に体調がおもわしくなさそうなリチャードを見て医師である友人マイケルが処方したもの。ハイトの酒にいれるためにも使われ、ここでも再登場。検事よりも出番が少ないですが、友人のひとりが医師であるというのはここで重要な役割を果たします。
外に出たハイトは、不審な動きを警官にみつかり発砲したため撃たれて死亡します。ポケットからマザードのペンダントや札束が見つかり、警察は彼をマザード殺しの犯人と確定。
発砲音を聞いて外に出て、騒ぎを見たアリスは「これで自分たちは助かる!」と自宅に戻りリチャードに電話をします。早く!!教授が危ない!!ここが一番どきどきした場面です。
でも、彼はすでに薬を飲みほしていて、電話の音にうつろな状態で反応はするけれど力尽きてしまう…。この表情には引き込まれました。そして観客である私も疲れました…。
原作とは異なるラスト
そしてラストは…。
肩を叩かれて目をさましたリチャード。起こしてくれとボーイに頼んだ約束の午後10時半。
ま、さ、か、の夢!「ぜーんぶ夢でした~」の夢オチです!
いや、無事でよかった、よかったけれども…。
帰りに帽子を受け取ると、クロークの担当はあのクロード・マザード。そして外へでるとドアマンは用心棒の
ハイトなのです。この場面はちょっとおまけをもらったみたいで面白かったです。
またもや肖像画を眺める彼に、また女性が近づいてきて「火をかして」と話しかけます。
もう女性はこりごりと、慌てて立ち去るリチャード。最後もくすっと笑えます。
『飾窓の女』まとめ
賛否両論あるという今作のラストは、当時の倫理コードにより変えられたそうです。
原作では夢ではなくすべてが現実ということですが、それではあまりにも後味が悪いので、私はこの作品に関しては
夢オチも許せるな~と思います。
私は何度か鑑賞していますが、一度目は完全に最後の最後までだまされていました。夢のような美女が都合よく現れるなんて嘘っぽいとは思いつつ。こういう作品を観るときは、「どうか夢オチでありませんように」という自分の希望的観測が働くのかもしれません。
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